第2次大戦後、日本人の飲酒行動は大きく変わった。戦後、酒類の消費量が急増したのは、高度経済成長のお蔭で国民の収入が増えたので、食べたり飲んだりすることの経済的負担が少なくなったからである。最近では家計費の中で食費の占める割合、つまり、エンゲル係数は21%%に減少し、お酒の飲み代は家庭で飲む、料飲店で飲むのを合わせても月に1万円程度、家計費の2%程度で済んでいる。

 戦前まではお酒の70%は日本酒であったが、戦後はビールが70%を占めるようになった。ビールの消費量は戦前には31万キロリットル、一人当たり1年に大瓶7本に過ぎなかったが、戦後、食生活が欧米風になったので、消費が急増して、平成6年には719万キロリットル、国民一人が500ミリリットル缶で116缶も飲むようになった。驚くべきことに戦前の13倍にもなったのである。これに対して日本酒は昭和52年に戦前の2倍、166万キロリットルに増えたがその後は消費が低落を続けて現在では60万キロリットル、全酒類の7%に過ぎなくなった。一人当たりにすれば0.5リットル足らず、江戸時代に比べると1割ほどに減った。

 そもそも、民族の食文化は保守性の強いもので、いつまでも地域の特色を失わないのが常である。ところが近年、日本の食文化はグローバル化の波に呑み込まれ、伝統の和食が少なくなり、洋風、中華風の料理が多くなった。これと軌を合わせて、外来のビールが民族固有の日本酒に交代してしまったのである。どちらも西欧先進国にはかつて見られなかった特異な現象である。

 現在、酒類の全消費量は927万キロリットルであり、そのうち、ビールが発泡酒と合わせて68%、焼酎が11%、日本酒が7%、ワインが3%、ウイスキーが1%。酎ハイ、カクテルなどが!0%である。、近年、飲酒の場面は食卓を離れて、ますます多様化して、入浴後にテレビを見ながら、スポーツで汗をかいた後に、趣味の集まりで、行楽地でなど、TPOに応じて手軽に飲める軽快なビール、発泡酒や酎ハイ、缶入りカクテルなどが選ばれることが多い。缶入りの酎ハイ、果汁入りのカクテル、、ハイボールなどアルコール度が3-5%の「すぐ飲める商品」の消費が増えて全酒類の8%にもなった。ノンアルコールのビール、カクテル、酎ハイなど疑似酒飲料?が人気を集め、スーパーの酒類売り場に並んでいる。若者の酒の飲み方が変わり、酒離れをしている証拠である。 

  

 

 

 

 

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