第二次大戦後、家庭では和食を食べることが少なくなった。肉料理、油料理の多い洋風、中華風の料理が歓迎され、ご飯を主体にして、魚と野菜のおかず、味噌汁に漬物という戦前までの和食の人気が低落している。しかし、最近、健康志向が強くなり、脂肪をとりすぎることのない和食がヘルシーだと復活する兆しがある。書店の料理レシピ本のコーナにも和食を紹介するものが目立って多くなったらしい。

 明治維新までの伝統的な食事文化を調べて、「和食」の特徴を探ってみると;             ご飯を主食にして、魚介類と野菜を多く使った料理を、箸を使って食べる。味噌、醤油、みりんなどの発酵調味料と鰹節、昆布などの出汁を使う。地域で採れる魚介類、野菜、海藻などの「旬」を大切にして、新鮮な持ち味をを引き出すように調理する、刺身や煮物などは「形よく切って」調理し,皿、鉢、椀などに美しく盛り付け、食べる人の目を楽しませるなどであろうか、地域ごとの郷土食、季節ごとの行事食が多いのも特徴である。

 我が国は平均寿命が世界一になり、高齢化が急速に進んでいるにもかかわらず、極端な肥満や生活習慣病の罹患率が欧米諸国に比べると少ない。これは家庭の食事が洋風化したとは言いながら、まだまだ米と魚、野菜を多く食べているせいではなかろうかと考えられている。欧米諸国では1日、3000キロカロリーもある食事を摂り、しかも肉料理が多いので脂肪の過剰摂取になって、肥満、高血圧症と動脈硬化が増え、心臓疾患が多発している。ところがわが国ではご飯が減ったといっても、まだまだご飯中心の食事であることには変わりがなく、そして動物性蛋白源として魚を多く摂ってきたことがよかったのであろう。たんぱく質の半分近くをごはんと脂肪の少ない魚介類から摂っていたから、脂肪の過剰摂取にならずに済んでいたのである。

 魚肉の良いところは脂肪が獣肉に比べて数分の一と少ないことである、牛肉や豚肉には脂肪が 20%ぐらい、脂身であれば40%も含まれているが、魚は鰻やまぐろの脂身を例外として、脂肪は数%に過ぎない。特に、エビ、カニ、イカ、タコ、や貝類は脂肪が1%以下である。この違いが肉類を多く食べる欧米人が脂肪の摂取過剰に悩み、日本人がそうでもない理由に挙げられていた。

 ところが最近では米の消費の減少が加速するとともに、食肉、乳製品、食用油の消費の増加が止まらず、魚の消費が急減している。そのために、脂肪からのエネルギー摂取が上限とされている総エネルギーの25%%を超えて29%に迫り、中高年者に肥満が増加して、生活習慣病が蔓延してきたのである。国民の健康維持のためににも、和食を活用しなくてはならない。

 

 

 

 

 

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