ご飯を食べる量が減は戦前の4割ほどに減り、私たちの1日の主食は平均するとご飯を2杯半、食パン1枚、うどん3分の1玉である。最近のコメの供給量は年間762万トン、小麦は419万トンだからご飯とパンの比率は2:1強だろう。そして、和風料理が減り、味噌汁を飲む回数も減った。

 現在、家庭で食べている「おかず」を調査してみると、焼き魚、刺身、野菜の煮物、きんぴらごぼう、和え物、冷奴、味噌汁、漬物などの和風料理が少なくなり、ハンバーグ、トンカツ、魚フライ、ビーフステーキ、カレーライス、シチュウ、グラタン、コロッケ、肉じゃが、野菜サラダなどの洋風料理、餃子、鶏肉唐揚げ、酢豚、焼肉、野菜炒め、マーボー豆腐などの中華風料理が増えている。大正年間の婦人雑誌の料理記事はほとんどが和風料理で占められていたが、現在、テレビの料理番組、書店に並ぶ料理レシピ本で紹介されているのは和、洋、中華、そしてそれらの折衷料理である。諸外国の料理を積極的に受け入れ、日本風にアレンジして、いつの間にか食卓の定番料理にしているのである。

 戦前の家庭食は和食メニューが90%であったが、昭和40年には洋風料理や中華風料理が増えて和風料理は36%に激減ていた。最近の15年ほどは人々の健康志向が強くなり、脂肪をとりすぎない和風の料理が少し見直されてはいるが、世界のどの国でも家庭ではその国の伝統の料理を食べることが多く、日本のように外国風の料理が家庭にまでどっぷり入り込んでいるのは世界的に見て極めて珍しい。

 今一つの変化は家庭の食事に地方色、郷土色と季節感が少なくなったことである。戦前は人口の75%が農村で暮らしていたから、地場でとれる旬の魚介類や野菜を使う特色のある郷土料理や季節ごとの行事食を楽しむことができた、多彩な郷土料理や行事食があることは伝統的な日本食の特徴の一つであった。ところが、第二次大戦後は人口の75%が都会に集中するようになり、住民の食料はすべて遠隔地から運ばれてくるように変わった、食料品の流通が全国規模になり、スーパーなど量販店は季節に関係なく通年的に生鮮食料品や加工食品を全国各地から仕入れて、どこでも同じように販売している。だから、家庭で使う食料品は全国どこに行っても同じようなものになり、地域ごとの郷土料理や季節ごとの行事食が少なくなったのである。

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