昨今、TPP(環太平洋経済提携協定)に参加交渉をするに際して、日本農業の中心である稲作の将来が懸念されている。日本の米は生産価格が高く、TPP参加によって安い輸入米が流入してくると対抗できないからである。

 日本の米作りは作付面積が一戸平均1ヘクタールと狭くて効率よく機械化できず、作業賃金も高い。アメリカでは数百ヘクタールの大規模稲作であるから徹底的に機械化されている。だから、米1トン当たりの生産費は日本では20万円かかるが、アメリカでは10分の1の2万円で済む。また、タイの農家の水田は平均5ヘクタールで、アメリカほどに広くなく機械化もされていないが、賃金が安いので米1トンが1万円あまりで生産できる。

 最近、日本では水田を借り集めて15ヘクタール規模で米作りをする農家もあるが、それでも生産費は1割ぐらい安くなる程度であり、到底カリフォルニア米やタイ米との内外価格差を解消することはできない。したがって、輸入米には778%という高い関税をかけて国内稲作農家、144万戸を保護してきたのである。今回、日本の米がTPP交渉の除外品目にならずに輸入関税が撤廃されたら、現在の国産米、年産850万トンのうち270万トンが輸入米に置き換わると試算されている。現今の農業共済制度だけでは農家の収入減を補償しきれない。今回は米を除外品目にできるとしても、今後長期間続けらるものではない。

 国産米の消費を拡大しようとする取り組みは、数年継続されてきたが効果は挙がっていない。上手に炊き上げた白いご飯ほどおいしいものはないと思うのは高年者ばかりで、若いマクドナルド世代は白いご飯は苦手だという。とすれば、稲作を国土の自然環境や景観の保全に欠かせないものとして、大型の国家補助金制度で維持していく必要がある。イギリスやヨーロッパの農業国でも、自然環境を維持するために国内農業を巨額の補助金で維持しているのである。

 和食の主役であるご飯を守るためには、消費者であり、納税者でもある全国民の意識改革と理解が必要にになっているのである。

 

 

 

 

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