現在、稲の作付面積は全国で160万ヘクタール、米の生産量は850万トンに減っている。米の消費量が昭和38年の1341万トンをピークとして現在、780万トンにまで減少したので、米は生産過剰となり減反政策が実施されているからである。私たちの先祖が汗と涙で営々と拡張してきた水田の実に35%にあたる90万ヘクタールが休耕田として放置されているのである。

 ご飯とごく少量のおかずで十分な栄養を摂るためには1日に米5合、750グラムが必要だとされてきたが、奈良時代から明治になるまで1400年間、米の生産量は一人、1日当たりでその半量しかなかった。大正、昭和になって米不足を輸入米で補鵜ことによりようやく1日3合弱、440グラムを食べられるようになったのである。第2次大戦後になって米の反当たり収量を増やして一人当たり1日、400グラムの生産できるようになり、米の自給がやっと達成できた途端に、洋風化したおかずを多く摂るようになって主食としての米の消費量が減少し始めたのである。現在では1日に1合あまり、167グラム、茶碗に2杯と少しのご飯しか食べあくなった。因みに米どころのラオスやベトナムでは1日に450グラムを食べている。

 日本の食料自給率は平成10年以降、カロリーベースで40%に低落したままである。自給できる農作物は米だけであるから、自給率を回復するには米をもっと食べるようにしたい。ご飯を茶碗にもう半分多く食べて、輸入小麦で作ったパンやスパゲテイを減らせば、自給率はそれだけで45%に回復するのである。

 和食にはおいしい「ご飯料理」がある。握り鮨、ちらし寿司、巻き寿司、五目飯、タケノコご飯、豌豆ご飯、マツタケご飯、茶飯、お茶漬け、雑炊、牛丼、天丼、うな丼などいろいろある。洋風ならば、カレーライス、ハヤシライス、オムライス、チャーハン、ピラフ、パエリア、リゾットなどを食べればよい。

 日本農業の中心である水田稲作は日本列島の自然の守り手でもある。稲は工場や自動車が吐き出した二酸化炭素を吸収して酸素に換え、田んぼから蒸発する多量の水は酷暑を和らげる天然のクーラーの役割をする。また、水田は河川、湖沼につながっていて魚の稚魚や水生昆虫の住処になっている。水田の湛水量は76億トンもあり、全国にあるダムの総貯水量の3分の1にもなるから、梅雨や台風シーズンの豪雨の遊水地にもなっている。青田を渡るさわやかな風,黄金波打つ秋の田園風景を失ってはならない。和食を大切にすることは米作りを守ることであり、体にも、心にも、自然にもやさしくすることである。

 

 

 

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