和食とか、日本料理という用語は戦後から使われるようになった、日本酒、日本茶、日本そばなどと同じように、それまで日本人が日常的に食べていた食事を欧米料理や中華料理と区別するために生まれた用語である。明治の文明開化、さらには第二次大戦での敗戦を経験して、肉、ハム、ソーセージ、バター、チーズなどを多く使う欧米風の料理が多くなり、家庭の日常食がかつてないほどに大きく変わったからである。 今日、高級料亭で提供される伝統の日本料理は和風、洋風、中華風の料理が並んでいる家庭の食事とは全く別物のように見える。

 しかし、カタカナ英語が多くなっても日本語が英語に変わったわけではないのと同じように、伝統的和食がなくなったわけではない。家庭の夕食メニュウを調査してみても、主菜は洋風、中華風のものが多いが、副菜には依然として和風のものが多いのである、。特に、中高年者には和風の食事を好む人が多い。ホテルの立食パーテイーでも、テリーヌやハムよりも鮨、てんぷらといった和食が先になくなる。海外旅行が2週間も続くと、梅干しや醤油の味が恋しくなる人は多い。

 このように見てみると、食材や料理法は大きく変わったが、日本人の嗜好は変わったといわれるほどには変わっていない。伝統的な日本の食事のパターンを残しながら、肉や乳製品などの料理を取り入れているのである。では、伝統の食事パターンとは何か、

 日本人が明治維新まで続けてきた食事文化を調べて、「和食」の伝統要素を探ってみると、ご飯を主食にして、魚介類と野菜を多く使った料理を、箸を使って食べる。味噌、醤油、味醂などの発酵調味料と鰹節、昆布などの出し汁を使う。地域でとれる魚介類、野菜、海藻などの「旬」を大切にして、それらの」新鮮な持ち味を引き出すように調理する。刺身や煮物などは材料を形よく切ってつくり、美しく絵付けした皿、椀、鉢に盛りつけて食べる人の目を楽しませる、などであろうか。地域ごとに郷土食、季節ごとに行事食が多いのも特徴である。

 

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