近未来に襲ってくる世界的な食糧危機にどう準備すればよいのか、それには、食料輸入と食料自給のバランスを調整するだけではなく、食料消費そのものをコントロールすることが必要なのでる。

 狭い国土に多くの国民が生活して豊かな食事をするのであるから、大量の食料を輸は入することは今後も続けなければならない。頼りの国内の農業生産はこれ以上増える見込みがない。過去数十年の増産政策はことごとく失敗し、食料自給率は40%に低迷したままである。国内農業生産は増やすことを考えるより、これ以上に減らさないことを考えるべきである。

 それよりも、無駄の多い食料消費を節約することを考えなければならない。たとえば、ご飯を食べることを増やし、肉料理、油料理を減らスことである。脂肪の摂取過多になっている現在の食事を25年前の理想的な食事に戻すだけで食料自給率は50%に回復し、肥満や生活習慣病が解消することはすでに説明したとおりである。 現在2000万トンはある食料の無駄遣い、まだ食べられる食料の廃棄、1000万トンはあると考えられる必要以上の飽食、節度のないグルメ志向を自粛すれば、自給率はさらに10%回復すると計算できる。

 将来も食料を安定して輸入するためには輸出国との間に食料安全保障の経済提携協定を交わしておく必要がある。しかし、その前提は自由貿易協定、FTA加入である。TPP加入をいつまで拒否していても、国内農業が復活することはない。安い海外農産物の流入による国内農業への打撃は生じるであろうが、それは抜本的な農業保障制度でカバーすればよい。食料の安定確保は国家の最優先課題であるから、イギリス、アメリカ、フランスなどでは国内農業を巨額の農業補助金で保護しているのである。

 とにかく、今後はいかに輸入し、いかに自給し、いかに消費するかのバランスをとることが必要なのである。ところが、食料貿易や国内農業を論じる有識者は多いが、食料消費の見直しを提唱する人がいないのは不思議である。消費の節約や食育の大切さを論じてもメシの種にも、お金にもならないからであろうが残念なことである。

 筆者が著書「日本人の食育、技報堂出版」、「大人の食育百話、筑波書房」あるいはこのブログ「食育博士の辛口レクチャー」で繰り返し訴えていることであるが、 今後の栄養士教育や栄養指導はカロリー知識や献立つくりだけでは済まなくなり、食料事情全般、並びに食文化に関する広い知識と見識が必要になる。  来年は食文化中心に発信するので、ご愛読くださるようお願いする。

 

 

 

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