毎日食べる食物が健康に深い関係があることを知り、食生活によって自分の健康を管理しようとすることは良いことなのであるが、近年の健康食品ブームには少なからぬ行き過ぎと誤解がある。

 たしかに、メタボ肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などは食事と関係の深い「食源病」とでもいうべきものではあるが、さりとてこれらの病気を確実に予防したり、直したりできる食べ物はないのである。また、保健効果がると証明されている食物繊維、EPA,DHA,イソフラボンなどは日常の食事で多かれ少なかれ摂取しているから、特別の事情でもない限りわざわざ健康食品で補給するまでもない。

 ただ、個人の生活状況や身体状況によって、時として生じる食生活の偏りを健康食品によって補正しようとするのであれば意味がある。しかし、保健効果があることが科学的に証明されている特定保健用食品であっても、その効果は穏やかなものであって、進行してしまった生活習慣病の治療には役に立たない。膝や腰の関節の痛みを和らげると宣伝されているヒアルロン酸やコラーゲン、コンドロイチン硫酸、グルコサミンなどはそのまま体内に吸収されて患部の関節に到達するという保証はない。

 もちろん、中高年者の体の不調、疲労、腰痛、膝痛などは病院で受信しても治りにくいものであるから、元気が出る、疲労が回復する、痛みが和らぐなどとテレビや雑誌で宣伝している健康食品を利用したくなる心理はわからぬではない。しかし、残念ながらこれら老年者の悩みを解消することは今後の老人医療の課題である。

 とにかく、主食、主采、副菜を基本にしてバランスの良い食事を規則正しく摂り、適度な運動をすることが重要なのである。その上で、健康食品を利用するのであれば、科学的根拠のある「特定保健用食品」を利用することをお勧めする。体に良いと宣伝している食品さえ摂っていれば、健康は維持できると安易に考えてはならない。 健康食品の解説はこれで終わりにするが、より詳しくお知りになりたければ 橋本直樹著 食の健康科学、食品の機能性と健康 第一出版 2005年刊 2400円をご覧ください。

 

 

 

 

 

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