特定保健用食品やサプリメントに使用されている多数の機能性成分のうち、その保健効果が科学的に検証されているのは、今のところ食物繊維、乳酸菌、オリゴ糖、必須脂肪酸、機能性ペプチド、ジアシルグリセロール、イソフラボン、茶葉カテキンなど限られたものだけである。これらの成分は日常に摂取している食材の中に含まれている成分であるから、三度の食事をバランスよく摂っていれば必要量は摂取できるものであり、補充するまでもないものである。また、摂取しても、その効果は穏やかなもので、高血圧症、糖尿病、高脂血症などを治療できるほどのものではない。健康食品の効果はあくまでも体のリズムを整えてよい健康状態を保持ことにより病気を予防することにある。

 しかし、疾病を治療できる医薬はあるが、疾病を予防できる医薬はないといってよい。それなれば、今後の健康食品に期待したいのは、医薬では対応できない発がん予防、免疫賦活、老化遅延などの効果を検証することである。、これらの効果は短期間の臨床試験では確かめることができない。発がん予防効果にしても、マウスを使う動物実験であれば、発がん性のある化学薬物を投与した上で、機能性成分を投与するグループと投与しないグループに分けて数か月飼育した後、解剖して発がんのあるなしを比較することができる。ヒトを対象にする場合にはこのような試験は許されないから、多人数の集団を摂取グループと摂取しないグループに分けて数年あるいは十数年にわたり発がん率を追跡観察する疫学調査を実施しなければならない。また、疫学調査を実施しても、対象にした集団により、また投与量の違いにより、いつも同じ結果が得られるとは限らない。これは機能性成分の保健効果、健康効果の研究に残された大きな目標であり、困難ではあるがぜひ解決したい課題である。

 たとえば、 野菜に豊富に含まれているβーカロテン、ビタミンE、ポリフェノール類などは活性酸素を除去して発がんを抑制すると期待されている。免疫賦活作用を期待されているのはビタミン、ミネラル、不飽和脂肪酸、乳酸菌、ビフィズス菌などである。緑茶、大豆、果実、などに含まれるポリフェノール類にはがん、心疾患、老化などの原因になる活性酸素を消去する抗酸化作用がある。

 

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