誰でも老齢になっても健康で元気よく過ごしたいと思うものである。 ところが中高年者には肥満と生活習慣病が蔓延している。飽食と運動不足の毎日を過ごし、加工食品や外食に頼る他人任せの食生活を送っている人は、当然ながら自分の食生活に自信が持てなくなり、3人に1人は将来の健康に大きな不安を抱いている。

 しかし、主食、主菜、副菜を基本にしてバランスの良い食事をしよう、もっと運動しようと思っていても、忙しい日常生活では難しい、そこでテレビや雑誌で、痩せられる、血糖値が下がる、あるいは血圧が下がると宣伝している健康食品、サプリメントなどに飛びつく人が多い。最近の調査によると、健康食品やサプリメントを毎月、数千円で購入し、日常的に服用している人が3人に1人はいる。だから、健康食品全体の売り上げは年間、2.5兆円を超え、主食であるコメの生産額、1.8兆円を上回るという異常な現象が起きている。

 食べ物の役割はおいしく食べて、栄養素を補給することであるが、そのほかに体の調子を整え健康状態を良好にして、疾病を予防する健康増進効果(保健効果という)がある。この保健効果が優れている食品は健康に良いといわれているのであるが、どのような有効成分(機能性成分)がどのような保健効果を発揮するのかまだ十分には明らかにされていない。従来から滋養強壮効果があるとして民間療法に広く使われてきた朝鮮人参、すっぽん、クロレラ、プロポリス、ロイヤルゼリーなどは、まだ有効成分も、その作用も科学的にははっきりしていない。

 現在までに、人に服用させる臨床試験で効果があったと認められた食物成分は、食物繊維、乳酸菌、オリゴ糖、乳、大豆、イワシなどのペプチド、リノール酸、リノレン酸、EPA,DHA、などの必須脂肪酸、ヘム鉄、大豆イソフラボン、ジアシルグリセロール、茶葉カテキンなどである。これらの成分を多量に含むか、あるいは添加した食品であれば、人に服用させて効果を確かめる臨床試験を行った後「特定保健用食品(特保、トクホ)の承認を受けるおとができる。現在1000種類のトクホが承認を受けて販売されていて、年間売り上げは5200億円である。年間2.5兆円も販売されているその他の健康食品の大部分は保健効果が「科学的」には検証されていないのである。

 

 

 

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