日本の食事には醤油、味噌、漬物など塩辛いものが多い。食塩の消費量は家庭用、業務用を合わせて年間190万トン、一人当たり1日に41グラムにもなるが、江戸時代にはその倍近くを消費していた。塩は1日に1.5グラムを摂れば生理的には十分なのであるが、調味料としてどうしても多くを摂取することになる。塩分の取り過ぎは高血圧を誘発しやすいので、戦前には1日に25グラムもあった食塩摂取量を西欧並みに6グラムに減らすように指導してきたので、最近やっと10グラムに減った。ラーメン1杯のスープには食塩が5グラムも入っているから注意しよう。

 若い女性にはカルシウムと鉄が不足している。体内のカルシウムは90%がリン酸と化合して骨を形成するが、古くなった骨からはカルシウムが溶脱して骨量を一定に保っている。高齢になるとカルシウムの吸収が悪くなり骨の形成が衰えるが、ことに女性は閉経後、女性ホルモンの分泌が衰えてカルシウムの溶脱が激しくなり骨が脆弱になる。若い女性に多いカルシウム不足は中高年になってからの骨粗鬆症の原因になる。現在、1000万人もの中高年女性が骨粗鬆症に悩まされているのを忘れないでほしい。

 成人はカルシウムを1日に600ミリグラムを目標として摂取する必要があるが、15歳から49歳の女性の摂取量は平均506ミリグラムに過ぎない。カルシウムの豊富な食品は牛乳、ヨーグルト、小魚や海藻、納豆、豆腐、緑黄色野菜などである。牛乳1杯、200ミリリットルにはカルシウムが220ミリグラムあるから、1日の摂取目標の3分の1を補給できる。しかし、摂取したカルシウムは30%ぐらいしか吸収されないので、効率よく吸収させるためにビタミンD、ビタミンC、ビタミンK と、マグネシウム、鉄、亜鉛などを同時にバランスよく摂ることが必要である。

 私たちの血液には鉄が3グラムほど含まれている。呼吸して取り込んだ酸素を体内に運ぶのは赤血球に含まれている血色素ヘモグロビンの役目であるが、このヘモグロビンに鉄が必要なのである。月経のある成人女性は1日に鉄を10ミリグラムほど補給しなければならないが、鉄は吸収されにくいのでレバー、海藻、煮干し、大豆製品などを積極的に摂取するのがよい。鉄欠乏性貧血になると、動悸、息切れ、食欲不振などが起きる。女子大生の4人に1人は鉄が不足していて血液の比重が軽く、献血を断られている有様である。

1