日本列島は周辺を海に囲まれているから、私たちは昔から魚介類を多く食べてきた。近年は近海での漁獲量が減り、輸入魚が増えているが、それでも一人一日に平均して魚や貝を約80グラムは食べているから、欧米人に比べれば3倍j以上の魚好きである。

 それで、私たちはタンパク質を魚から最も多く24%を摂取していて、肉類から摂取する17%より多い。魚のタンパク質はエビ、カニ、貝類を除いて必須アミノ酸が充足していて、牛肉、牛乳、卵などのタンパク質と同様に栄養価が高い。タンパク質は小麦、豆、米からも摂取しているが、米や小麦などの植物性タンパク質には必須アミノ酸が不足している。

 さらに、魚肉の一番良いところは脂肪が肉類に比べて数分の一と少ないことである。牛肉や豚肉には脂肪が20%ぐらい、脂身であれば40%も含まれているが、魚肉には鰻やマグロの脂身を例外として、脂肪が数%しか含まれていない。特に、エビ、カニ、タコ、イカや貝類の脂肪は1%以下で少ない。それで、魚介類から摂取している脂肪は食べ物全体から摂取する脂肪の10%に過ぎないのである。肉類を多く食べる欧米人が脂肪の過剰摂取に悩み、魚を多く食べる日本人がそうでもない理由はこの違いによるらしい。

 さらに、魚から摂取している脂肪には血液のコレステロールや中性脂肪を増やす飽和脂肪酸が少なく、コレステロールを減らし、血流を促進するリノール酸、リノレン酸、EPA,やDHAが多い。カルシウムを吸収するのに欠かせないビタミンDも魚からその75%を補給しているのである。

 ところが近年、魚の消費量が減り、肉の消費量に追い越されようとしている。子供や若者が魚をあまり食べなくなったことはこれまでも指摘されてきた。焼き魚や煮魚が好きな10歳代の少年少女は25人に1人である。それどころか、魚に親しみ、調理法もよく知っている年配の世代でも魚離れが起きてきた。

 原因を考えてみると、高齢化が進み、単身世帯が全世帯の3割を超え、一人で食べる個食化が多くなっているので、手のかかる魚料理が敬遠されるらしい。業界では骨を除去した切り身商品、1人用刺身盛り合わせ、焼き魚、煮魚の一切れ真空パックなど、魚食需要の復活への取り組みが始まっている。、

 

1